HRTは適切に行えばリスクは低いことが分かっていますが、いくつかの注意点があります。HRTによる乳がんリスクの上昇はとても少なく、生活習慣によるリスク（肥満、アルコール摂取など）と同程度かそれ以下であることが分かっています。しかし、乳がんは女性のがんの中で最も頻度が高いため、誰もが罹患する可能性があります。乳がんに罹患した場合には、その多くは女性ホルモンにより増悪します。早期発見が重要となりますので、1年に1回は必ず乳がん検診を受けて下さい。また更年期症状の緩和のためにはエストロゲン（卵胞ホルモン）の補充のみでよいのですが、それのみでは子宮内膜増殖症や子宮体がんを発症するリスクがあります。そのため子宮がある方では、黄体ホルモン製剤を併用することで子宮体がんのリスクを上昇させない工夫が必要です。その他肥満や年齢（60歳以上）によっては血栓症や心筋梗塞や脳卒中のリスクに気を付ける必要があります。